川上和歌子 wakako kawakami


Sugar (2009)    深川いっぷく調剤室ギャラリー、深川Labo/東京 (2ヶ所同時開催)



川Laboでの展示

深川いっぷく調剤室ギャラリーでの展示


わたしの記憶の奥底にひそんでいた
蟻の イメージとは


その1
夏の朝 アサガオが花開くのをみようと早起き
咲いてる!とよろこびいさんで花を覗き込むと
すでに花の中心、花粉のところに蟻が1匹
かなしいことに、たいがいいる
その黒くうごめく影にいつもがっかりさせられること

その2
父のお墓にいくと周辺に
蟻の巣穴がたくさんある
都会にしてはめずらしく そこでは蟻のはたらく姿を
なかなかダイナミックに観察できること

その3
とおい昔
植木をうえかえようと鉢を移動しようとしたとき
鉢を落として割った
鉢の中は蟻の巣だったらしく
たくさんの蟻とたくさんの卵と 土が散らばったこと

そのあとどんなふうにかたづけたのか、おぼえていない



ふたつの向かい合わせのギャラリー空間にたたずんだとき
蟻の巣のイメージがひきだされた
蟻を作品にすることは具体的に考えたことがなかったのですが
このふたつの空間によって、ひきだされたのです

花は巣口で
ワカコは餌場

そして 一番抱えていた強烈なイメージ
からだにはびこる汚れのようなもの
ぬぐいとろうとしても ぬぐいとれないような 付着物
つきつめていくと、その黒い付着物は蟻の黒とかさなって
今回の作品はできあがりました



わたしは黒い洋服、黒いものを身につけることが
ほとんどなく
黒い作品も、発表したことがありません

制作期間中はふだん
作品がどんどん増えてくると、どんどん満たされてゆくのですが
今回は 黒い塊が増えるにつれ
どんどん息苦しく 圧迫されるような
いままでに感じたことのない体験をしました

それほどまでにつらい思いをして
なぜつくるのか、自分でも不思議で
完成してからも
自分の作品である実感さえわかないほどだったのですが

展覧会中盤にさしかかった頃、ようやく蟻(黒いもの)に慣れてきて
いまでは大好きな作品になりました




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